クロモジで里山再生

投稿日: カテゴリー: クロモジ部会

平成31年4月30日
きさらづ里山の会

クロモジで里山再生

 当会では里山の荒廃を憂い、その保全・整備を行い里山の再生活動を実施しているが、運営資金には事欠いている始末!!!である。
さて この活動で芳香木の「クロモジ」が自生していることを知った。クロモジと言えば、「楊枝」として また「香料・薬用」として用いられている。

「クロモジ楊枝」は 古くから当千葉県の上総地区では手作りによる楊枝の産地であった。江戸へ出荷され、他の産地よりも香りと色が良いとの評判で、高価に取引されていたようである。しかし歯ブラシの出現(下記 注)により衰退し、現在は茶道で、また菓子楊枝として僅かな利用があるのみである。この現状を憂いて、現在その伝統を守るために製作技術を伝承する取り組みもなされている。今では手作り楊枝の産地は、日本で唯一この上総地区だけのようである。

我国の山林で自生している「クロモジ」は 日本独自の固有種であるとも言われる。
このクロモジの木から採取される「クロモジ精油」は 希少な精油としてアロマ業界では注目されており、また海外でも注目され始めていると聞く。
そこで 自然で化学薬品を含まず、オーガニックで純国産の「和の香り」クロモジ精油に着目し、里山再生の一手段として考えている。
精油の多くは海外からの輸入であり、国内で栽培され、抽出されているものでもその種子、苗は海外産のものである。この実情を考えると純国産の「和の香り」のする「クロモジ精油」が注目される所以といえるのではないだろうか。

しかし 森林荒廃によりクロモジの植生は減少している。このためクロモジ木の原料確保も大きな課題となる。そこで 現在は苗を育て山への植栽を実施しており、その生育環境等の調査を大学機関に依頼している。クロモジの研究文献は大変少なく、試行錯誤しながらの実施であり、大学によるこの研究調査を多いに期待しているところです。
クロモジは陰樹性(日陰で育つ)を持ち、杉・檜の針葉樹、コナラ・クヌギ等の広葉樹の中でも育つ。その特性により樹間栽培も可能であり、萌芽更新もするため新たな森林経営の資源として、また耕作放棄地の解消にもつなげることができるのではないだろうか。

肥料も農薬も使わず、クロモジを使っての里山再生活動へ、そして地域資源を再発見し、地域活性化に向けた新たな取り組みに繋げたいと考えている。

〈参考〉・「江戸時代文化」昭和2年
・「木材ノ工芸的利用」農商務省山林局編 明治45年
〈注〉歯ブラシの出現までは、歯のケアーとして「房楊枝」が使われていた。長さ20㎝位のもので、片側が房状(筆状)で、他側が突起状になっており、房状の部分で、歯磨きとして、またお歯黒に使用されていた。他側の尖っている部分がつま(爪、妻)楊枝そして菓子楊枝として、現在の形に変化している。